「こたつにみかん」というのは日本の冬の風物詩、のはずだ。「はずだ」というのも、我が家でその情景は見ることが出来なかったからである。
我が家のコタツの上には、パイナップルが乗っている。まるでパイナップル畑かのように、ごろごろと。それを自分で切って、割り箸に刺して食べる。小さな頃から当たり前だったので、友達に聞いたときは驚いた。世間では『こたつにはみかん』らしい。疑問に思って、ある晩父に聞いてみた。
「冬は寒いだろ。パイナップルには南国のイメージがあるじゃないか。沖縄の観光地ではこうやって割り箸に刺して食べていそうだろ。毎日がエブリデイじゃないか」
たぶん『ホリデー』のおやじギャグだと思うが、それすら使い方を間違っている。つまり毎日観光気分を味わえるだろ、と言いたいらしい。一理あるような気もしたが、いかんせんパイナップルは歯に挟まる。舌に残る酸っぱさにも嫌気がさしていた。
「そんなくだらない理由なの?うちだって普通のうちと同じようなものを食べたいよ。もうパイナップルはうんざりだよ」
友達に聞いたときにちょっとバカにされたこともあって、強く言いすぎてしまった。本当はそんなにパイナップルは嫌ではないのに。刺して食べるのは楽しかったのに。何かを言いかけた父はちょっと悲しそうな顔をして、パイナップルを抱えて部屋から出て行った。