2015-07-22

天使 田村隆一

ひとつ沈黙がうまれるのは

われわれの頭上で

天使が「時」をさえぎるから

 

二十時三十分青森発 北斗三等寝台車

せまいベッドで眼をひらいている沈黙

どんな天使がおれの「時」をさえぎったのか

 

窓の外 石狩平野から

関東平野につづく闇のなかの

あの孤独な何千万の灯をあつめてみても

おれには

おれの天使の顔を見ることができない

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