4月。新しい始まりの季節。
大学生のわたしは、新しい学年に進み、ようやく専門する分野も決まって、少しだけ張り切っていた。
これから頑張ろう。頑張って授業に出て、勉強しよう。
わたしは、もともと引っ込み思案の暗い性格で、友達も少なく、サークルというものにはいちおう入っていたけれども、そこでも友達といえるほどの仲のよいつながりは作れなかった。
だから、そのぶん勉強で頑張ろうとした。
4月。新しい始まりの季節。
それは一日目だった。前の晩、次の日の授業にちゃんとでようと思って、早めに寝ようとしたけれども、眠れなかった。眠れない、眠れない、眠れない。
ようやくうとうととしはじめたのは、ほんの少し外が明るくなり始める頃。わたしは、ぼんやりとした頭で、起きられるのかな、と思った。
そして、起きられなかった。
目が覚めたら、もう日は高く昇りきった後の時間。枕もとの時計を見たわたし。心臓が、どきんと鳴る。
授業に、出れなかった。
その日の授業には、もう間に合わない時間だった。その日、わたしは、家の外に出なかった。
わたしはそれまで、優等生だった。授業は休まず、勉強はきっちりとして、試験ではいい点数を取る。
友達のできないわたしが唯一できたのは、勉強だった。
一日目の晩、布団に入ったわたしは、考えた。一日くらい、なんとでもなるさ。誰だって、学校にいきそびれることは、ある。
だけれども、それは、一日だけではなかった。
次の日も、目が覚めると日は昇りきっていた。昨日と同じ。心臓が、どきんと鳴る。
その日、わたしは眠れなかった。一睡もできなかった。目が冴えて、疲れた頭が、じりじりと焦げる。
結局、その一週間、わたしは学校に行けなかった。
わからない。なんで急に。行こうとしても目が覚めず、目が覚めても体がだるい。そんなことは、わたしにとって初めてだった。どうしたらいいか分らなかった。
わたしは、学校を休むほかなかった。明日はきっと行ける。ちょっと疲れてただけだよ。気にせずに休んでれば、明日はきっと元気に行けるはず。
わたしは、だけれども、結局次の一週間も学校に行けなかった。
なんで? なんでわたしは……
わたしはもう完全に元気を失っていた。ぼんやりとした頭で、布団の中でまとまらない思考をじりじりと巡らせる。
わたしは、いったいどうなってしまったのだ?
誰か、誰か、助けて。
だけれども、わたしを助けてくれるひとは誰もいなかった。わたしには、友達が、いない。
どうすればいいのか分らない。誰か、助けて。
誰もわたしを助けてはくれない。
布団の中でぼんやりと過ごす毎日。気がつけば、五月。連休が始まっていた。
布団の中でひとり、ぼんやりと過ごす毎日。
どうすればいいのか分らない。
誰か、助けて。
遅刻でもいいから目が覚めたら家からでな。そして学校に行きな。行ってみたらうそみたいに悩んでたことを忘れるよ。そして頑張ろうとしなくていい。遅刻しても勉強ができなくても...