彼女ば俺のことが好きだったと思う。
と書くと非モテ童貞の妄想みたいだが、周りの奴らも「あの子ってお前のことが絶対好きだよな」って言ってたし、俺は女性経験はむしろ多いほうだ。ちょっと目が合ったくらいで勘違いするほど飢えているわけではない。
今までは、告白してきた女の子と適当に付き合って適当に別れてばかりいた。だが、彼女は今までの女の子とは全く違った。話せば話すほど会話が深く噛み合って深くなっていく。それだけで、セックスよりも気持ちよかった。初めて人の「中身」を好きになった。
何人かで遊んでいても、いつの間にか隣に彼女がいて、俺は彼女とばかり話していた。気が付いたら、他の奴らは気を利かせたのか帰ってしまい、二人きりになった。
「うちで飲み直さない?」と勇気を出して誘ってみた。
「でも、帰らなきゃ」と彼女。
沈黙。振り払われたらどうしようかと思っていたけれど、軽く握り返してきた。彼女の手のぬくもりが伝わってくる。これはいけるんじゃないか、と思った瞬間。
「やっぱり帰るね。旦那のご飯を作らなきゃいけないし」
旦那て。
ていうか女はほんと難易度が高いよな。俺みたいなバカ男にしたら何でも好きシグナルに見えてしまう。で告ってみたら「そんなんじゃなかったのに」的な。うまくいくときもあるんだ...