2009-01-02

私情最愛のパン屋さん

腹ペコな子は、とってもお腹が空いていました。

だから、恋人からパンをもらって食べました。もぐもぐむしゃむしゃごっくんこ。お腹いっぱいになりました。でもすぐにまたお腹が空いてしまいます。腹ペコな子は恋人のパンを食べ尽くしてしまいました。恋人は腹ペコな子の元を去っていきました。

腹ペコな子は、とってもお腹が空いていました。

だから、友達からパンをもらって食べました。もぐもぐむしゃむしゃごっくんこ。お腹いっぱいになりました。でもすぐにまたお腹が空いてしまいます。腹ペコな子は友達のパンを食べ尽くしてしまいました。友達は腹ペコな子の元を去っていきました。

腹ペコな子は、とってもお腹が空いていました。

だから、両親からパンをもらって食べようとしました。けれども両親は言いました。「私たちはパンを持っていないんだよ」腹ペコな子はがっかりしました。

腹ペコな子は、とってもお腹が空いていました。

腹ペコな子は思いました。「あんなにたくさん食べたのに、腹ペコなまんまだ。きっとこの先もどんなに食べても腹ペコなまんまなんだろう。だから、もう何も食べないようにしよう」

腹ペコな子は、とってもお腹が空いていました。

だけどガマンしました。もう何も失いたくはないからガマンしました。でも腹ペコはとってもつらいことです。だから神さまに願いました。「神さま、腹ペコでも生きていけます。でも、とってもつらいです。どうしたらつらくなくなりますか?」神さまからの返事はありませんでした。

腹ペコな子は、とってもお腹が空いていました。

だけど、ある日腹ペコな子の元にパン屋さんがやってきました。腹ペコな子はパン屋さんのパンが食べたくてしょうがなかったけれど、ガマンしました。そんな腹ペコな子の様子を見て、パン屋さんは言いました。「君にパン作りを教えてあげよう」

腹ペコな子は一生懸命パン作りを覚えました。とっても疲れたし、できあがったパンも今まで食べてきたパンと比べたら、とってもまずかったです。でも、自分でパンを作れるようになりました。

パン屋さんは言いました。「パンを作るのはとっても疲れるから、お腹が空きすぎないうちに作りなさい。そして、いつもおいしいパンを作ろうと思いなさい。おいしいパンが作れるようになったらお腹もいっぱいになるよ」

腹ペコな子はうなづきました。最後に、腹ペコな子はパン屋さんに名前を訊ねました。パン屋さんは誇らしげに言いました。

「私情最愛のパン屋さ」

そうしてパン屋さんは、腹ペコな子の元を去っていきました。

腹ペコな子は、おいしいパンを作れるようになるのは大仕事だと思いました。まずいパンしか作れない自分が、本当においしいパンを作れるようになるのか疑いもしました。

でも、信じて歩こう。自分に残された道はそれしかないみたいだから。

そう思って、ちょっとだけ腹ペコじゃなくなった子は、今日もパン作りをしています。

いつか自分も、私情最愛のパン屋さんになるために。

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『腹ペコな子の話』を改題の上、h-yano様のコメントを受け、一部改変させていただきました。

この話を読んで下さった方、ブクマして下さった方、ありがとうございます。

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