夜になって居場所が駅しかなくなった。
伊那の駅の待合室で読書をしていると、隣に座っている女性の前に、ズカズカと長靴の音が近づいてくるのがわかった。
「おい」年配の男性の声。彼女は無言で立ち上がり、男は、ズカズカと歩き去った。
しばらくして、バタンと車のドアを閉じる音が聞こえ、走り出した。
そのあとの沈黙が、たとえようもなく切なかった。
家族っていいなぁ。
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