もう忘れてしまいたい。
それなのに、あなたとあなたに受けたカウンセリングの光景がいまだに思い出される。
話す度に疲弊し、どんなに言葉を選び話しても、まるで肩すかしを食らったようだった。
僕は伝わらないからといって諦めなかった。
さらに言葉を厳選し、いやになっても通って、語ることを止めなかった。
なぜなら、あなたを話のわからない無能だとも思いたくなかったし、またそれまで掛けた時間と労力がすべて無駄になるように感じたからだ。
しかし手応えはない。そのうち、ときおり憎しみに近い感情を抱くようになった。
つぎ込む時間と労力がどんどん膨らんでますます中断したくなくなるのに、あなたから芳しい応答を受け取ることができなかったからだ。
いまとなっては本気であの期間のことを忘れたい。思い出す度に怒りが湧いてくる。それが苦しいのだ。でも何度も何度も記憶によみがえって、かえって忘れられなくなっている気さえする。あなたは終始誠実であったと思う。なにも罪なことはしていないと思う。それでも僕はあなたが憎い。そんな自分が嫌になりながら。
ひどい気分だ。
はっきり言おう。
あなたは話のわからない人だった。
とても親身で柔和で悪気のないバカだった。