異性へのアプローチは釣りに似ていると思う。
魅力的なお魚がいる。ボートで悟られないように近づく。大きな音を出して警戒されたらそれまでだ。その魚が食べてくれそうな、自分が持てるいちばんおいしそうな餌を釣り糸につけて大海の中へぽちゃん、あとは待ちの世界。時には撒き餌も使う。だが相性が悪ければ、餌に見向きもされない。
自分が使う釣り糸は、大きな針のある釣り糸ではない。中には毒針を使うような人もいるけど、それはフェアじゃないと思う。お互いにダメージが大きいから。
だから、相性という釣り糸だけで釣る。押したり引いたりするタイミングが合っていなければ、簡単に逃げられてしまう。
今まではそんなふうに女性にアプローチしてきた。うまくいったことはあまりない。一生かけた釣りなのだが、本気で本当にがんばって釣りにいっても、簡単に逃げられてしまう。コツはがっつかないこと。あせらないこと。でも本気で釣ること。
ところが、自分が釣られる側に立つのはかなり鈍感なほうらしい。
これまでもあとで、あっこれはもしかしてアプローチされてたんだろうか、とはたと気づくこともあった。案外非モテというのは、釣られることに鈍感なだけなのかもしれない、とか思ったりもする。
で、今回はどうもその逆パターンのようだ。
気がつくと、既に目の前に釣り針があった。水面上にはお姉さん。
知り合いの知り合いで、ひょんなことから話すようになった人で、魅力的な人だ。今まではどちらかというとリスペクトな感じで、話が合うからついつい話し込んだりしたこともあった。
だけど、ある時はたと気がついた。これは釣りだと。目の前にある数々のメールは、とても魅力的な餌だ。
実は釣られたくてしょうがない。でも釣られて平気だろうか。釣り針が毒針だったりしないだろうか。実は食べられて口に合わなかったらどうしよう。
据え膳食わぬは男の恥