■感想が書けなくなった

私は1年前くらいまでソシャゲをやってはTwitterに感想を書き殴る生活をしていた。

特に感想屋というわけでもなくフォロワーも少なかったが、ソシャゲのシナリオを読んで思ったこと、感動したこと、過去のイベントが伏線になっていたことなどを思うがままに書き連ねるのが楽しくてしょうがなかった。

少ないながらも居てくれるフォロワーと「今回ここが良かった」みたいに話し合うのも楽しかった。

しかしその1年前くらいから少しずつそういうことをしなくなった。決定的な原因は無いものの、理由はいくつか思いつく。

アニメ化が微妙だったこと、運営のやり方が気に入らなかったこと、音ゲーをするのが嫌いでストーリーだけ読みたかったこと、コロナでライブに行けなくなっていたこと、特殊な職場でほぼ24時間他人と居て、ソシャゲに熱中できなくなっていたこと———色んな要因が重なって、私は少しずつソシャゲのストーリーを読まなくなっていた。

そのソシャゲの物語は丁寧に積み重ねがされているだけに、しばらく時間が空いてふと気が向いたときに読んだらもうわからなくなっていた。

昔は過去のイベントとの関連などがすぐに思いつき、本当に良いストーリーを書いてくれているな……と目に涙を浮かべていたが、過去のイベントのことが全く思い出せない。得られていた読んで楽しいという体験を喪失してしまった。

読んでも理解できずに放置し、更新されて更に理解できなくなる悪循環に陥った。

そのソシャゲと、いくつかのソシャゲも掛け持ちしていたがやはりストーリーについていけなくなってしまい今では触っていない。

時は流れて、ウマ娘がリリースされた。

元々競馬が好きだった私は斜に構えていたものの、そうした事情もあって暇を持て余しており、インストールしてみると瞬く間にハマっていった。

ガチャを回し、出てきた子を育て、まずは育成の楽しさに熱中した。ストーリーを開放するためだけにまとまった時間を要求されるリズムゲーはもううんざりだった。

その点ウマ娘は育成自体が楽しく、ライブシーンもどちらかと言えばご褒美要素として機能しており、リリース当初はうまぴょい目指して育成しまくった。

やがてそれも落ち着いてくるとようやくストーリーを読んだ。めちゃめちゃ面白かった。まだ全部は読めていないが、どのウマ娘も史実を汲み取りつつ、上手く解釈して美少女にそれを落とし込んでいるように感じた。

特に元々ランニングフリーとかスダホークとかバランスオブゲームだとかの善戦マンが好きな私にとっては、ナイスネイチャの育成ストーリーは非常に心にくるものがあった。

そのままアニメ1期2期、SGにシンデレラグレイも全部履修した。媒体ごとに扱い方が異なり新鮮に楽しめた。フォロワーたちにもウマ娘旋風が吹き荒れており、久々に話題に混ざれるなと思った。

しかし、やっぱり感想は出てこない。

感じ入ったものもたくさんあった、思わず涙したシーンもあった。だがそれだけだった。

「面白かった」「楽しかった」「泣いた」「良かった」相変わらずそれ以上の語彙が出てくることはなかった。

昔やってたソシャゲの感想が言えなくなったのは積み重ねを絶ってしまったからだと思っていた。だから一気に履修したウマ娘ならば言えるのではないか……と少し思いもした。だがダメだった。私自身に物語へ没入するという感覚が失われていた。

「感想を言うために作品を観るのは不純ではないか？」

「他者との交友のツールにしていないか？」

そんな考えもよぎったが、そうであるともそうでないとも言える。

作品を観て「楽しかった！」で終わるよりも、その作品の中から何か見つけてきた方が楽しいし、少なくとも私はずっとそのような楽しみ方をしてきた。そして私が見つけたものと他者が見つけたものには違いがあったりして、その違いもまた楽しかった。そしてそれを不純だとは今でも思っていない。

だが今の私には発見がない。その作品から自分の中に持ち帰ったもの———役に立つ、立たないは問題ではなく、そうした発見が無いことで作品に対する印象も希薄になり、また、他者が発見したものと見比べて楽しむこともできない。作品を楽しむ能力が低下してしまっているのだ。

特殊な勤務状況下で慣らされ、仕事で経験を積み、昔フリーター時代に部屋でTwitterをしていただけの頃よりもずっといい暮らしができるようになった。

だが、その代償なのか。人と居ようが一人で居ようが作品にのめり込めなくなってしまった。

もう1年以上もの間、作品にのめり込めないことに対して心がざわついて、どうしてこうなってしまったんだろうと後悔する日々が続いている。

社会的体裁を整えてそれなりに暮らしちゃいるが、根は作品を心ゆくまで楽しんで、そうして揺れ動いた自分の心と向き合いたいだけなのだ。

あの時私は、どんなにつまらなくてもやる気がなくてもコンテンツを追うべきだったのか？ それとももう、私は作品を楽しむことはできないのか？

この程度の文量にすら手間取り、言いたかったことの半分も言えていないような気がしたまま筆を置く。

Permalink | 記事への反応(2) | 22:43

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