うちのアパートのね、トイレ。
天井、あまり高くないの。
で、トイレットペーパーを入り口にタワー状にして積んで、一袋が4つ×3段の12個だから、大体6袋とせいぜい1段までくらいしか積めない。つまりタワー状に置けるトイレットペーパーは、76個が限界ってことになる。
76。
うちのちっぽけなアパートは、別にバリアフリーは設けられていない。
また、小さい子の育児にも向くとは思えない。子供のいない夫婦か、一人住まい向けの物件。
76というのは、ここに住むことのできる人の上限の年齢を表しているのではないか、と思う。
思うだけだ。気のせいだし、思い込みに過ぎない。分かっている。
でも仮に亭主がタヒんだとして、その後誰の介助も貰わずに強健な肉体で生きて、まずまず普通の生活を保てるのは
このあたりはとてもリアルな数字になるんじゃないだろうか。
人間は個体差は多少あるが、80を過ぎると大抵、家族からなんらかの援助が必要になる。
90過ぎても独り暮らししている人は、あらかた、スープの冷めない距離に親族がいる。
このアパートで生きるなら76までの寿命しかないんだよ、くらいに弁えつつ、今日も私はトイレで寿命の巻物を数える。