■後ろを振り返る余裕なんぞない
精子が膣内に注がれた瞬間からラットレースが始まった。
僕は産まれたが、それ以前に多大な犠牲があった。
すこやかに育ったようで、周りにたくさんの人がいた。
年を経るに連れ、周りの仲間は移り変わり、僕の領界から消えていった。トラッキング不能。
こうして僕が増田を書いている間にも、多くの仲間が戦線離脱、徒歩への移行を余儀なくされた。
僕はまだ走っている。
僕はまだ走れる。
しかし、給水場がみえてこない。
走りだしたときから、一度も目にしていない。
休めない。
どこだ、一息付けるところは。
いつだ、一息付けるときは。
変わらない空間。
替わる人々。
止まらない日々。
目に映えるあまたのものが、色をなくしてまとわりつく。
足に堪えるわずかなものが、茨となってからめとる。
ツイートシェア