祖母が亡くなって数年たった中学生の時、母親から「お前のばあちゃんはビッチだった」と言われた。
実際はビッチとは言わなかったけど。
母は祖母の不貞の相手との間にできた子だという。
祖父の出征の時期と誕生日を照らし合わせるとそう考えるほかないらしい。
実際、祖父と母とは全く似ているところが無い。
そしてそれは母が育った地方の農村で、村の暗黙の了解だったそうだ。
どんな気持ちで母親が育っていったのか、祖父母が育てていったのか、想像もつかない。
ただ、夫婦の子である叔母とはかなり差をつけられて育てられたらしい。
私は家族に溺愛された。特に祖母に。
母は仕事をしていたため、祖母に私を預けていた。
母と祖母は、私の関心を互いに引きたがった。
今思うと、実の親子でありながらあれは異様なかけひきだったと思う。
実の母に「おばあちゃんとママとどっちが好きなの?」と問われる。
祖母には父母の悪口をさんざん聞かされる。
父はそんな家族から逃れるように長期にわたって単身赴任を繰り返した。
私は次第に異様な行動をするようになっていった。
耳や鼻に綿をつめる。机の中に潜って固まる。
さんざんいじめられたっけ。
今ならわかる。
子はかすがいと言ったりするけれど、
私は家族としての、形をなんとかつなぎとめた糊のようなものだったんだ。
私というこどもを糊のように使って、私の家族は家族として形をとどめていたんだと。
ずっとずっと、わたしがわるい子だとおもっていたよ。
異様な私のせいで、家族をくるしめていたとおもっていたよ。