2010-03-23

ありがとうございます、お兄さん

小学校高学年ぐらいの少年が小銭をぶちまけてしまっていたから、

俺は欲しかった本が手に入って気分が良かったので拾うのを手伝った。

拾い終えると立ち上がってお互いに向き合ったのだが、少年の姿を見て驚いた。

少女みたいな少年だったのだ。

長めの柔らかそうな髪が特に印象的だった。

そんな少年がにっこりと笑い、頭を下げて、こう言った。

「ありがとうございます、お兄さん」

綺麗なお辞儀だった。見事といってもいい。良い教育を受けているのだろう。

対して俺は、

「どどど、どういたしましてぇ」

死にたくなった・・・。

小学生相手に情けないにも程がある・・・。

少年はきっとこいつ気持ち悪いなと思っただろうが、それを全く表情にも仕草にも出さず、

またもやにっこり笑って、小さく頭を下げて、「それでは」と歩き去っていった。

俺はその後姿を見送った・・・それから回れ右をして、胸にわだかまる感情を持て余しながら、家に帰った。

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