2009-12-13

かっこよくなりたい

 あなたは仕事ばかり。

 そんなことをいうみよちゃんはませた19歳で、背伸びをしたがると言うよりは、19歳でひとは全能になると思ってる。いわゆるお嬢様校でほんもののお嬢さまと話すと、なにか染まるみたい。

 ハンカチの生地がどうこうとか、ピッチカート・ファイヴがかっこいいとか。

 インテルマネージャーと話した、脈あるもとか。

 そういうニュースに流れるような話ばかりで、そういうふわふわがたぶん楽しいのだろうなあと思ってしまう。

 ぼくが好きなのはそこじゃないのに。

 誰しもが、そういったよくわからない、意味不明なラベルを求める。

 298,000円の値札を見る。

 意味不明なラベルだ。このゴミみたいなバックにこの値段がつくはずはない。

 だから、それにはぺっとつばを吐いて、そうじゃないほんとうに価値があるものを探す。きみ、価値ないよと言い続けて、ひたすらに探す。ベートーベンにも、モーツアルトにもだめだして、じゃあそれ以上の上ってどこにあるの? って思って、分からない。でもどこかにある。それぐらいじゃないと、新しいモノは作れない。

 でもさ、これってさ、みよちゃんに振られたくないから、って、今ではそうなんだよね? ベートーベンに勝ちたいのは、ずっと思ってきた感情だけど、かっこよくなりたいんだよね。ただ単に、射程距離にいる偉人が偉大なだけで。こいつにはとりあえず、勝っておくという、そういう、圧倒的な弟子根性がある。

 かっこよくなりたい。

 それは勝ちたいのだよな、師匠に。

 だれもがみとめて、自分も認めるひとに。

 みよちゃんにも、あなたが一番かっこういいって言われたい。だけど、だめなんだ。ほんとうに一番かっこうよくなって、それから、その一番かっこういいをあなたにプレゼントしたいんだ。

 ぼくは、あなたのものだって。

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