あなたは仕事ばかり。
そんなことをいうみよちゃんはませた19歳で、背伸びをしたがると言うよりは、19歳でひとは全能になると思ってる。いわゆるお嬢様校でほんもののお嬢さまと話すと、なにか染まるみたい。
ハンカチの生地がどうこうとか、ピッチカート・ファイヴがかっこいいとか。
そういうニュースに流れるような話ばかりで、そういうふわふわがたぶん楽しいのだろうなあと思ってしまう。
ぼくが好きなのはそこじゃないのに。
誰しもが、そういったよくわからない、意味不明なラベルを求める。
298,000円の値札を見る。
意味不明なラベルだ。このゴミみたいなバックにこの値段がつくはずはない。
だから、それにはぺっとつばを吐いて、そうじゃないほんとうに価値があるものを探す。きみ、価値ないよと言い続けて、ひたすらに探す。ベートーベンにも、モーツアルトにもだめだして、じゃあそれ以上の上ってどこにあるの? って思って、分からない。でもどこかにある。それぐらいじゃないと、新しいモノは作れない。
でもさ、これってさ、みよちゃんに振られたくないから、って、今ではそうなんだよね? ベートーベンに勝ちたいのは、ずっと思ってきた感情だけど、かっこよくなりたいんだよね。ただ単に、射程距離にいる偉人が偉大なだけで。こいつにはとりあえず、勝っておくという、そういう、圧倒的な弟子根性がある。
かっこよくなりたい。
それは勝ちたいのだよな、師匠に。
だれもがみとめて、自分も認めるひとに。
みよちゃんにも、あなたが一番かっこういいって言われたい。だけど、だめなんだ。ほんとうに一番かっこうよくなって、それから、その一番かっこういいをあなたにプレゼントしたいんだ。
ぼくは、あなたのものだって。