祖母が時代劇を見てた。
「えらく古臭いの見てるなぁ」と言ったら
見るともなく横にいて、
「ううん。特別編だって。この原作はこの人(主演)のお父さんのなのよ。
それを、息子が演じてるの。
まあ、お父さん向けの話だから、古いわよねぇ…」と、薀蓄を教えられた。
時代劇に出る役者なんて、知らないし、
へえ、と聞き流してなんとなく新聞をチェックした。
たしかに、再放送とは書いてない。
でも、なぜか違和感を感じる。
出演者を見て、余計に変な気がして、画面を見てた。
「なあ、やっぱり変だよ。」
祖母は「ん?」という顔をしてしばらく黙ったが、
「ああ、そうだわ。このXXさん、もう死んじゃったもん…」
とつぶやいた。
祖母は一瞬、ちょっとがっかり、ビックリした顔をしたけど、
その後は「若いわねー」「このXXさんは、ホラ、あのドラマの何々役の人よ」と解説を続けてくれた。
役者って、すごいよな。
自分自身は老いて、あるいは命をなくしても
見る人の記憶の中ではずっと若いままで、
しかも不自然さの欠片もなく存在していけるんだから。