2009-08-30

大阪の高裁で賃貸住宅更新料に無効判決が出た。

賃貸住宅更新料とは、2年ごとに2か月分程度を更新料として支払うという制度である。これは大家といえば親も同然、店子と言えば子も同然という昔の慣例であった。

現行の借地借家法では、大家と店子の関係は物件の賃貸契約以外に存在せず、大家が店子の夫婦喧嘩に介入したり、子供の躾に小言を入れたり、店賃を確実に取り立てる為に、働き口を世話したり身元の引受人になったり、果ては、見合いを世話して定住を促進したりといった、長屋的人間関係は存在しない。

2年ごとに2ヶ月分程度の更新料というのは、土地建物の賃貸料とは別に、いろいろと世話になっている住み込みの大家(地主である場合は少なく、地主に雇われた家守、差配がほとんどであった)へのボーナス的報酬として上乗せされていたものであり、旧借地借家法は、それをそのまま法体系の中に取り込んでいた。しかし、現代においては、そういった関係が消滅している以上、その支払い根拠も消滅していると解するべきであろう。

ただし、どちらが良いのかという点では難しい部分がある。

家賃を確実に取り立てなければ賃貸物件運営は行き詰まる。少しでも住人の質を上げ、仲睦まじく健康に過ごさせるという環境を作らないと住宅賃貸業は行き詰まる。この行き詰まりを、いかにして防ぐかという観点から作られたのが、住み込みの大家(家守、差配)を配し、住人を管理監督させるという江戸時代の長屋システムであった。

しかし、高度成長期以後、終身雇用制度があって右肩上がりの成長が続く状態ならば、住人を管理するシステムが無くても家賃の払いが滞る事は無いし、学校が子供の躾をやってくれるし、母親はパートに出ていていつでも離婚できるし、離婚が発生すれば別居になり賃貸住宅の需要はさらに増えるという事で、住人を管理するシステムは完全に消滅していったのである。

今更昔に戻そうとしても、現行の借地借家法では戻せない。となると、持ち家を基本にするしかなくなり、人口の分散が必要になるのであるが、こちらの方は遅々として進んでいない。

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