別に自分は村上春樹の熱烈なファンではないのだけど何かの短編で
「すべての女は男に(間接的に、あるいは直接的に)金で買われている」という
件の短編があったので読み返してみて、自分の体験と重ねてしまいああなるほど
と思ってしまった。
何でもいい、出来る事からはじめようと思いアルバイトを始めた。
彼女に出会った。
よく笑う子だった。着こなしも素敵だった。デートに誘われた。
嬉しかった。楽しかった。自分が今までどれだけ孤独だったかを
伝えたかった。
バイトを始めて4ヶ月くらい経ってから準社員が入社してきた。
企業の御曹司でいわゆる金持ちのボンボンで女好き。シフトの都合上彼女と組んで仕事をする
とのことだった。
最初のうちは彼女は嫌がっていた。裏表が激しいとか彼の悪口を言っていた。自分は
そんな他愛のない会話に安堵していた。だけどしばらく経ってから彼女の態度が変わっていく
ことに気づいた。自分と話すときよりかは御曹司と話しているほうが楽しそうだった。焦った。告白をした。ふられた。
ある夜バイトが終わった後、彼女はわざわざ自分の目の前で御曹司と腕を組んでタクシーに乗って消えた。
翌週から髪を染め、メイクも濃くなっていた。その後も御曹司と遊び、町で声をかけられた男とも
遊んでいる。元彼もいる。復縁したいそうだ。
要するに彼女は御曹司の醸し出す金の雰囲気に靡いた。そして女としての自信をつけた。
其れだけの事だ。其れだけの事なのになんでこんなにも辛いのだろう。
たまに町ですれちがうとまるで戸寫物を見るような視線で自分を見る。