2009-08-22

地方秘書と票の今後の展望

票には三種類ある。一つは党につく票、もう一つは代議士につく票、最後のは、秘書につく票である。

党につく票は浮動票である。公約やイメージが支持の理由ならば、パクれば同じだけの効果が期待できる。代議士につく票は、秘書につく票と本来は同じなのだが、代議士本人は東京に張り付く事が多くなると、選挙区の事情に疎くなり、やがて、浮動票しか集められなくなる。つまり、基礎票として固められる票というのは秘書の票と言える。

この秘書は、議員会館に詰める秘書ではなく、選挙区に一年中張り付いている秘書の事である。議員会館にいる秘書は、選挙に関しては、まるっきり役に立たない。他の議員や省庁との連絡、代議士のスケジュールの管理といった、企業における秘書と似たような仕事になるが、そんなことを幾らやっても、選挙の票とは関係ない。

選挙の役に立つ秘書というのは、地元に張り付き、人々に頻繁に顔を合わせ、茶飲み話をし、地元のトラブルに関わって解決に尽力する秘書である。代議士の名代として冠婚葬祭に参加するが、その時にスピーチを求められても、よどみなく茶飲み話から引き出したエピソードを語り、法案やら補助金やら公共事業といった話を一切せずに終わらせる。そういった生臭い話は、代議士先生が行う。村一つ、町一つを丸ごと秘書の票にしていく事で、県会や市会、村会といった地方議会の選挙の票を操作し、地盤を固めていくのが、地方秘書である。

秘書の票は、秘書本人についているのであって、代議士が変わっても、たとえ党が変わっても、秘書が政治家の秘書として活動を続けている限り、その票は変わらない。代議士が地元に張り付いていれば代議士本人の票になるのであるが、代議士は東京で資金集めをしなければならない。

冠婚葬祭の度に、花やら祝儀やら香典やらの接待交際費がどんどん出て行く。秘書の人件費自体は、地方は物価が安いからそれほどでもないのだが、活動に伴って出て行くお金が馬鹿にならないのである。だが、このお金をケチっていては、票はつかめない。地盤を作るには相応のお金がかかり、このお金を手当てするのが、一年生代議士にとって一番大事である。このお金をケチり、地元に張り付く秘書を減らしたりすると、秘書の票が減り、地方政界に対する影響力が失われる。他の代議士が秘書というマンパワーと接待交際費というマネーパワーを注ぎ込んできたら、地盤を根こそぎ持っていかれることになるのである。

秘書の票を当てにするためには、地方秘書を置き、活動費用という名の実弾を十分に手当てしなければならない。

多選規制が行われた場合、選挙区の私物化が出来なくなるというのが一番大きな変化であるが、その変化は、票を持っている地方秘書のあり方に、一番大きく現れる。選挙区が変わる度に、秘書軍団を引き連れていって票を開拓するというのは非効率的なので、秘書軍団は次の候補者に引き継がせるという事になるであろう。国家老格の秘書が自ら立候補という造反の可能性もあるが、そうやって立候補した人が当選しても、多選規制でいずれ選挙区を明け渡さなければならないとなると、おとなしく支える側に回る可能性が高い。問題は、次の候補者に、秘書軍団を運用していけるだけの器局が無かった時であろう。

秘書がどんどんと辞めていき、地方政界への影響力を失う事になると困るから、政党が資金をある程度面倒を見なければならなくなるという展開が、一番可能性としては高い。地盤に張り付く秘書は、代議士ではなく、政党に所属するという形態を取る事になる。当然、代議士は、党に然るべき額のお金を入れないと、選挙区での公認を失うという形で圧力が加わることになる。

その先には、秘書が接待交際費を使った先からリベートを取る事が常態化し、そのような地盤の手入れは止めようという展開になって、現実認識とその対策である政策を競う政治になるんじゃないかなと予想しているのであるが、果たして、そこまで上手く転がっていってくれるであろうか。

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