■平等についての一考察
ある日彼女が訊いた。
「ひとはどうして平等じゃないんだろう?」
ぼくは平等というものを見たことがないから、よくわからない。
思うに、平等というのはバールのような何かで、自分が欲しいものを持ってる奴の脳天に振り下ろすためのものだ。
職にあぶれて町をうろつく外国人を見て、彼女が言った。
「あいつらは日本に巣食うダニだよ」
思うに、平等というのはとても大事なもので、独り占めにして誰にも渡したくないようなものだ。
僕は頭の部品が足りない人間だから、彼女が震える手で握り締める平等が見えない。
だから、彼女をやさしく抱きしめてキスをする。
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