ボクは誰でしょう? そう,キミだよ.2009年2月のキミ.もう大学生だ.
キミにとって,ボクはどんな風に見えるかな?
ちょっと変わった? そう言ってくれると嬉しいよ.
キミはたしか,2年半前に学校に行かなくなったよね.覚えてるよ.あの頃のことは,ずっと忘れることはないと思う.
クラブが嫌になった,そんなちょっとした理由で,学校をズル休みしたんだよね.
「それじゃあ辞めればいい」,その通り.クラブを辞めて,また学校に行こうと,そういう気持ちが全部ではなかったけど,少なからずあった.
でも,そうはならなかった.またちょっとしたきっかけで,学校に行こうとしなくなった.
「ちょっとした」って言うと,キミに怒られるかもしれない.でも,今のボクには,「ちょっとした」なんだ.だからもう少し聞いていて.
キミは2年半,何をしていたかい?
人と会うことを,外に出ることを,何度ためらった?
誰かが怒り,悲しみ,そして涙するところを,何回見た?
きっと,覚えていないだろうね.うん,別に覚えている必要はないんだ.
でも.そういうことがあって,いろんな気持ちを持ったはずだよ.
喜怒哀楽っていうけれど,それだけじゃない,いろんな気持ち.
残念だけど,今のボクにはもう分からなくなってしまったんだ.だから,「その気持ちよく分かるよ」っては言えないんだけど.
気が利かなくてごめんね.
今のボクは,後悔していない,って言ったら,嘘になる.正直に言えば,やっぱり後悔もしてるよ.
あのとき,この部屋で寝ていた,いや,「寝たふりをしていた」キミへ.
キミは,どんなふうに思って,そんな選択をしたのかな?
その選択をしていなければ,ボクは今のボクよりもずっと成長して,ずっと立派になっていたかもしれないんだよ.
その責任,そのツケが,今のボクに回ってきてるんだ.わかるかい?
でもね,今のボクに回ってきてることは,悪いことだけじゃない.
キミもたくさん苦労したんだと思う.
その苦労があって,今のボク,キミよりちょっとだけ強くなれたボクがいるのは,紛れもない事実だ.
そして,キミが選んだコトが良かったかどうかは,今のボクにかかっているわけだ.だよね?
思い出したくない.そんな過去いらない.
そうじゃない.そうじゃなくて,「そんなコトもあったね」って,キミに言いたいんだ.
キミはこれから卒業式を迎える.
キミがどんな選択をするか,今のボクはもう知ってるよ.
でも,それは教えることは出来ないんだ.
それはキミが決めることだからね.
そして,これからのボクは,今のボクが決めていくことだ.だから,キミはボクのコトを考えなくていい.
キミ自身のコトだけを,精一杯,考えていればいいんだよ.
「そんなコトもあったね」って,キミに言えるように,キミが笑ってくれるように.
今のボクは,ちょっとだけはりきってみせるよ.
だから,そのときまでは,キミと笑うそのときまでは,しばらくの間だけ
キミとさよならだ.