2009-02-02

妄想上の彼女

たとえば帰り道自転車をこぎながら、こんな寒い日には頬がバシバシ言うほど痛くて、帰ったら牛乳チンして飲むかなんて思う。まあそれはそれでいい。で、そういう時に、自分チンするんじゃなくて、誰かがチンしてくれたら嬉しいなと思う。それで妄想が始まる。

アパートの薄いドアを開けると、彼女こたつから立ち上がる。僕はさみーうあーとか意味のあるようなないような呟きを漏らしてコートを脱ぐ。こたつの上には彼女の飲みかけのカップから湯気が立っていて、彼女は僕のためにチンしようとしてくれてるんだけど、そのせいでカップの中身が冷めちゃったら悪いな、と思ったり。テレビからはバラエティ番組らしき笑い声が漏れていて、僕は流れがよく分からないから笑ってないけど、彼女はそれに合わせてくすくすと笑いながらおかえりなさいと言ってくれる。ただいま、と僕は答えて、それで——。

家につく。薄いドアを開けて、電気を点ける。部屋は静かに凍っている。急いでこたつ電気を点けて牛乳電子レンジに放り込むけど、部屋もカップもなかなかあたたまってくれない。テレビはつける気にならない。僕は目を閉じて、さっきの想像のあたたかさを逃がすまいと集中するけど、電子レンジの音と、ついさっきまでバシバシ言うほど痛かった頬のせいで、もはや続きを想像することができない。

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