妹の部屋に『しゅごキャラ!』を借りに行ったら、机の上にティファニーのケースがあった。
がーん。
妹は自分で宝飾品を買うような人間ではない。そんな金があったらコミケに回す。
そうか。そうなのか。そうだったのか。そんなものをもらうようになったのか。
「うちらってさあ、仲良いほうだよね」
ちょっと前、妹は妙にあらたまって僕にそう言った。
たぶんそうだろう。世の他の兄妹のことは知らないし、べつに一緒にお風呂に入ったりもしないけど、僕たちはかなり仲の良い兄妹だと思う。
父を早くに亡くし(だからといって僕が父がわりになれたとも思えないのだが)、「あなたと私とはいわば兄妹」とか言いながら相撲をとったり、僕がおやつを横取りしたのを「どろぼう、どろぼう」と追っかけっこしたり、あるいは母の帰りが遅いとき、僕がご飯を作って「さきにおあがり」と言えば、妹は「ではぼくたべよう」と答えたり、そういうふうに育ってきた。
浪人と留年を繰り返すダメな兄と違い、とっとと大学を出てしまった真面目な妹。ぜんぜん男の影なんか見せなかった妹。いつか家を出ていく日が来るのだろうか、もしかして僕らキャスバート兄妹みたいになるんじゃないかなあ、でも兄妹じゃ孤児を引き取るのは無理だろうなあ……とかなんとなく思ってた。やっぱりそんなことはないんだね。
君がどうしようもないくらい腐女子ってことは、もちろん知ってるんだろう?
いつ紹介されるんだろう、いったい僕はどういう顔をして会えばいいんだろう?
とか一人で感慨にふけっていたのだが……
何のことはない。いつか、妹の友人から頼まれて『テニスの王子様』の公演チケットの抽選に申込んださいに当選したときのお礼だって。ちなみにそれ、僕も動員された。
……。
その日、雪が降った。
おもてはへんにあかるいのだ。
あめゆじゅとてちてけんじゃ。