時々ふっとつきあい始める直前のあの何ともいえない居心地の悪さと不安と楽しさがよみがえってくることがある。もうずいぶん長く一緒にいて酸いも甘いもかみ分けてきたはずなのに、ずっと昔のあの楽しさがまるで今現在進行形で進んでいるかのような錯覚に苛まれる。
何も言わないで背中に身を寄せると、夫も私が何を考えているのかわかっているようで何?と笑いながらいう。どこにも行かないよと振り向きもせずに答える。
知ってる。あなたという存在は意識をすることすらなくなるほど私の中にしっかりと根を張っている。だけど、だからこそ、時々意識していなかったことに驚いて思い出すんじゃないのか。そして思い出話をする。あの頃よくいったあの店のパフェが食べたいね、といったりする。明日作ろうか。夫は笑いながら答える。たまには食べに行こうよ。