例えば病院のコントを考える。
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ピッ、ピッ、ピッ。心電図の音が響いている病室内。
ベッドには老人が横たわっている。こんにゃくゼリーをのどに詰まらせたのだ。
ピッ、ピッ、ピッ。
ベッドサイドでは同居している長男夫婦が見守っている。
妻「おじいちゃん…」
ピッピッピッ、ピーーー。
妻「おじいちゃーーーーーん」
夫「あれ、これ携帯のアラームじゃね?」
爺「ああ、よく寝た」
妻「おじいちゃん!」
爺「おはよう。おなか空いたな、雑煮でも食べたいわい」
夫・妻「食うな!」
チャンチャン。
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今こんなコントをテレビでやったら、不謹慎だ、と言われるだろう。そう、「今」なら。半年前だったら、ただのくだらないコントにすぎないのに。
しかし、以前にこんにゃくゼリーで子どもや老人を亡くした家族だったら、このコントは不快で不謹慎極まりない。
パンで子どもを亡くした親はパンなんてこの世になければよかったのに、と思うかもしれない。でもスーパーにはパンは溢れているし、テレビではパンのCMだってするし、フランスパンで殴りあうコントだってあるかもしれないし、ホットドックの大食い選手権だって行なわれる。ゼリーだろうがパンだろうがモチだろうが、笑いのネタになって、それを見て笑って暮らしている。暮らしていく。
不謹慎、と言われたらなにもできなくなってしまう。その不謹慎の対象範囲に入れられてしまったら。