作品についての詳しい解説は省く。
主人公達は毎回現れる「泥人形」と呼ばれる巨大な怪物と生死を賭けた戦いを演じるのだが、「泥人形」はその名の通り土塊で作られているらしく、毎回主人公の住む町の山に現れる(一度だけ旅行先に現れたが、それもやはり山奥だった)。
普通に考えれば、いきなり山奥に出現されても普段は学生だったり無職だったりしながら町で生活する主人公達が気付くはずはないのだが、そこはそれ、不思議な力でもって「山に『泥人形』が現れた!」というのを直感で知る事が出来るようになっている。その瞬間を作者は「山から巨大(ゴジラ級)な刃物が突き出す」という描写で表現している。これほどシンプルで分かり易い「危機感」があったのかと個人的に衝撃を受けた。
「何キロも離れた所から視認できるほどに巨大な抜き身の刃物」を実際に想像してみるといい。その禍々しさと非現実感、そしてそこへ向かう主人公達が抱えるプレッシャーの大きさもこちらにヒリヒリと伝わってくる。
また、後になるほど強力な「泥人形」が登場するため、出現する刃物も「日本刀」、「幅広な西洋風の剣」、「斧」と変化していき、単体では脆弱なものの膨大な数が出現するタイプの泥人形では「山から無数の刃が突き出す」といった変則的な表現もあった。
強烈な「殺意」や「敵意」を表現するために「体を刺されたり斬られたりする幻覚を見せる」という演出は既にありふれたものになったが、それを思い切り推し進めたようなこの描写は非常に新鮮に感じられた。何か元ネタがあるんだろうか。あるとしたらそれも読んでみたい。