商店街の鶏屋さんで焼き鳥などを買って帰る。お店のおばちゃん、手提げビニール袋をなかなか開くことができず、難渋している様子。
「平手で挟んで、こうやって揉んでやるとすぐ開きますよ。」
「そうそう、そうなのよね」
…あら、余計だった?
「静電気が起きてね、反発するんですよ」
「へぇ!…教えてもらっちゃった」
もう少し正確に言うと、手が湿っている場合、水が吸着剤の役割を果たすため、手とポリエチレンがくっつき、ポリエチレン同士が剥離する。こすりあわせることでポリエチレンと手の密着性が高まり、吸着力がさらに高まる。手が乾いている場合、手とポリエチレンが滑り、こすれるため、人間の皮膚はプラスに、ポリエチレンはマイナスに帯電する。ポリエチレン同士は同じ電位に帯電するため、反発し剥離する。つまり、手が乾いていても、湿っていても、平手で挟んでこすりあわせることによってすみやかに袋の口が開くことになる。
でもおばちゃんにとっては、この、すぐに今日から役立つ知識も、逆に何かのプライドを刺激してしまったようで、あんまりいい感じではなかった。「静電気」の部分にはちょっとだけ反応していたようだが。「手が乾燥してる」と言われたように感じたのだろうか。「素人風情が知ったふうなことを」と思ったのだろうか。
なんか次から買いづらくなっちゃったな。
黙ってたほうが、よかったのかな。