何で来ている服が上等なだけでその人間までちょっとだけ上等に思えちゃうんだろうな。子供の頃はそんなことなかった。服装やいわゆる容姿なんか気にせず、そいつの目と言葉と態度で人間を見ていた。それらも目に見えて耳に聞こえるものだが、うわべに惑わされずに何者をも見ようとする意思があった。でもその分色彩や造詣の美しさには鈍感だった気もしないでもない。視野を拡張し、視点を増やせたらしい。でも自分の本流ではないなことにもとらわれてしまうようになったな。煩わされる毎日だ。自信がないからだろうね。
悪意はゆっくりと醸成される。時計の短針のような遅々とした変化で。自分を偽り周囲を恨み世界を冷笑する。ある日いつの間にかずるくなった自分を鏡の前で発見したくはない。どうしたものかな。