自分の名前をひたすら連呼する候補者には投票したくないという人を見るけれど、
じゃあその人たち以外のどの人に投票するんだろう。まだまだ沢山候補者はいるしなあ。
ということを考えていると、昨日行き帰りに面白い候補者を見かけた。
一人目は、電車に乗った時に見た候補者。駅前で「行ってらっしゃいませ!!」ではなく、電車の中。
もちろん電車の中に候補者がいるわけがなく、どうしてたかというと、電車に手を振って見送ってた。
まだ電車の速度の遅い駅近くで、工事現場の白い鉄板の壁をバックにして、ただ淡々と手を振っていた。
選挙カーも、支援者も、のぼりすら回りに見当たらない。たすきだけが、彼を候補者だと言っていた。
たった一人で手を振って、ほどなく視界から消えていった。恐らく後ろの方の車両からは見えもしない。
俺のいた車両でもほとんど気づかれていない様子だった。そんな候補者を見た。
二人目は、駅から出る時に見た候補者。彼は、駅前で「おかえりなさいませ!!」の定番パターンだった。
だが、時間は既に夜の10時前。当然マイクを使えるはずも無く、肉声。
駅の出口はシネコンと直結している歩道橋で、利用者がとても多いため広い。
彼はその広い出口の隅っこでおかえりなさいませと言い続け、メトロノームのように頭を上げ下げしていた。
声はとっくに枯れてしまった様子で、彼にも支援者は一人もついていなかった。
その枯れた声は小さく、駅の出口は広いため、彼に気づかずに素通りした人も多いだろう。そんな候補者を見た。
彼らのそれは戦略だったのかもしれない。どうせ電車の中には声は届かないのだから、
支援者はたくさんついていても意味が無いかもしれないし、枯れた声は演技だったりするかもしれない。
情に訴えかけるような部分は計算づくなのだろうとは俺も思うし、そもそもこういう手法自体、
しかし、彼らがたった一人でそこに立ち、うるさくない方法で有権者に訴えかけたのは事実だ。
たすきの氏名を読み取ろうと思ったときにはすでに彼が後方遥か彼方だったり、
あまりに声が枯れているため彼の名前がよく聞き取れなかったりしたことを少し悔やんだ。