機会に恵まれなかっただけで自身のステータスはそれほど低くない工学部男子がいるように、
そこそこ可愛いもののたまたま運が無かった女子大生もそれなりにいるはずで、
そんな女子大生と出会う場はきっと学園祭で、そこで俺は・・・という、
既に土台からして危ない感じの妄想を夕方の電車内で繰り広げていましたが、
資格試験の時に行ったどっかのキャンパスの門を越え、賑やかそうな広い道に出て、
脇にあったしょぼい造りの屋台でその娘と出会った時点で妄想がストップしました。
そこから先はナンパで、俺の脳内にそんなストックは無かったからです。
さらに言うと俺は何故かその妄想学園祭に一人で来ており、それが何とも現実を痛感させるものであったので、
昔は女子の一挙手一投足からありとあらゆる物語を展開していた俺の妄想力も
ここまで現実に縛り付けられるようになったか、堕ちたもんだな、と、
自分が始めた妄想に自分で落胆するという高度なトリックを決めていると、
妄想のきっかけになった向かい側の座席のカップル、工学部男子をイメージさせる彼氏と、
彼氏ははじめから寝ていたのですが、段々と横にゆらゆら揺れ始めたのです。
それまでは携帯をいじることもせず、ぼーっと景色を眺めていた彼女はそれを見てクスクスと笑い出し、
彼氏はそれを聞いて目を覚まし、そして二人は顔を見合わせ、小さな声で笑いあい、
彼女は打ち合わせたかのように言葉も無く彼の肩に頭を預け、目を瞑り、
そしてそのまま二人は俺が降りるまで安らかに眠っていました。
二人が織り成す人という字は逆光の中でとても映え、