冬の空気の厳しさに
肩をすくめて立ちゐたり
春の空気のやはらかなることを請ひねがふ
恋ひねがふ
さてもいざ季節はうつろひ
しをれ落葉のあらはれば
かの張り詰めたる寒気をこそ
なつかしみ請はぬとは思へず
樹々の枝は白く
埃にまみれた街をあらたにする
いきづいた新緑は
火山灰に覆はれた街をしづかに染めるだろう
冬には春を 春には冬を
なつかしみて請ふ
なつかしみて恋ふ
そういふものさと誰かが言ふ
そういふものさと誰もが言ふ
ないものねだり ないものねだり!
けれどもそれとばかりは思へず されどそれが何かは知らず
だからこそ 生きてゐる だからこそ 生きてゐる
壊れた機械のやうに 俯きつつ 呟くばかり