「私はうつ病じゃないんですか?」
「うつ病ではありません。」
「私は統合失調症じゃないんですか?」
「統合失調症でもありません。」
「一体何の病気なんですか?」
「あなたは神経症でもアスペルガー障害でも精神発達遅滞でも躁鬱病でも摂食障害でもナルコレプシーでも認知症でもない。」
「じ、じ、人格障害だとでもいうのですか?」
「じゃあ、なんだっていうんですか!」
「つまり、あなたは精神医学の枠組みでは疾患や障害にはあたらない、ということです。」
「先生、私は一体何だというんですか!」
「標準偏差のなかに入る、ごく普通の人、ということになると思う。」
「……。」
「ただし、それは精神医学の物差しで言えば、の話です。善悪の物差しで言えば、一般に、あなたの所業はクズ、と呼ばれるに値するものだと思います。」
「クズ…。」
「違うというのですか。」