2008-02-10

個人的物語

去年の秋、沖縄にひとりで行った。

死ぬか、と思って、車を飛ばして北の断崖に向かった。

はるか下に砕け散っている波の白い花をじっと眺めていたら、

なんだか気が済んだので宿に戻った。

誰も引き止めなかったことに満足したのだ。

年末鉄道鹿児島から稚内まで行った。

吉松に流れる、あたたかい河にかかる橋の上でひとり踊った。

息を止めて、ほれ、いち・にい・さん、

滝川の凍れる路面の上でも踊った。

しい・ご・ろく、白銀のステージが輝いている。

稚内空港では同僚を見送るシスターが、なぜか私にも声をかけてくれた。

「行ってらっしゃい」

恋人ができた。

ひとを好きになる気持ちとは、

果てしない欠乏の具体化だと思い知らされる。

夢ですらそれを誤摩化すことはかなわず、

私はいやいやと現実を受け入れる準備を始める。

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