2014-10-03

精子がしゃべった

私が彼氏に求めるのは背の高さと面白さと爽やかさかな

などとニコニコしながら会話するJK三人組のとなりで、そのどれにも当てはまらない俺は信号を待っていた。

ようやく秋になったばかりなのに、きょうは暑苦しいくらいの陽気なので、オフィスの皆は不満を漏らしていたが、俺は内心わくわくしていた。

そして今、ランチタイムで賑わう街中へ繰り出してみると、期待どおりに、いつもよりは薄着の女性が華やいでいる。

透けブラ全開のJK三人組はもちろんのこと、その横で髪を撫でつける仕草が色っぽい20代後半の女性背中も、一見するとキャミしか見えないもののよーく観察すればあの妙なる線が浮き上がってくる。横断歩道の向こう側で同じく信号を待つ女性たちの透けブラは見えるはずがないけれども、ピンク色のリュックサックを背負った女子大生上半身を膨らませる丸い二つのものの大きさや、その後方で日焼け止めを塗っている30代後半の熟した色気などは、遠目からでも容易に明らかとなる。

信号が青にかわった。

Dはあるだろうと踏んでいた女子大生の胸は、近くに寄ってくるとまるで小さくなったように感じられ、実際にはCどころかBにも満たないくらいな貧しさであった。きっと気を失わせるくらいの香ばしい匂いを漂わせているであろうと察したあの30代女も、横断歩道の中ほどで俺のそばを通りすぎたが、いくら残香を吸ってみてもそそられず、見かけ倒しであった。

なーんだ、どうせ現実はこんなもんだ、目をつぶって横断歩道を通れれば夢は壊れなかったのに。はあ。

と心の中でため息をつく折から信号渡りきろうとする自分の方へ、まもなく赤になろうとする信号を見つめながら駆ける40代のおばさんが、少なくともFはあろうそ巨乳をぼよんぼよんとさせるのが目に入る。

おおお。顔だけ見ればただのおばさんなのに、視線ちょっと下へ移すとまるで女王様人生には意外がつきものから面白い

ふふふ、とまた心の中で呟いて、俺はランチ時の混み合う蕎麦屋に入った。

男だらけの店内で食べるざる蕎麦は今ひとつだった。

午後の仕事も男どもに囲まれながら。紅一点の女性社員は、貧相なうえに気が強いのでオカズ対象にもなり得ない。今日は俺のことを罵倒しやがった。仕事が遅いとか何とか。トイレで泣いた。俺にはM嗜好は無いつもりだ。

連日残業つづきだから帰りは暗闇になる。疲れた足でようやく駅に着くと、今度は満員電車罰ゲームが待っている。この日も乗り込むやいなや反対側のドアへ押しつぶされた。背中の感触があまりに柔らかだったから、きっと若い女性の胸が当たっているんだろうと思って股間を熱くした。が、降りるときに顔を見たらただの太った男だった。

真っ暗な部屋の明かりをつけるとそのままトイレへ一直線。疲れを癒してくれるのはアレしかないのだ。ペーパーをぐるぐる巻きにして、一息ついたら、きょうの収穫を頭に描きながら、一気にする。女子大生や30代女、40代おばさんと俺とが戯れているところへ、ときどきあの女性社員邪魔をしてくる。この野郎と怒鳴りつけてやり、顔にぶっかけてやったところで、もう紙は濡れていた。

ああ、疲れたなあ。と呟いたら、甲高い声が聞こえた。

おつかれ。いいこと教えてやろっか。

一匹の精子が微笑をたたえながらこちらを見つめていた。

あのな、お前の悪口を言ったあの女、よく見てみろ。暑い日には、ノーブラで通しているんだぜ。

マジか!と叫ぶと、笑顔でピョンピョンと二跳ねしたきり、精子は消えてしまった。

こいつの命はこれ限りだが、俺には明日がある。夢がある。希望がある。

なんだかおかしくなってきてヒャッハーと奇声を上げて大笑いする。勢いよく立ち上がり、テレビをつけると、明日天気予報今日以上の炎暑を予告していた。

ふふふ。明日オカズが決まった。

卵子がしゃべった

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