■マンゴーチャツネ入りのインドカレーは確実にネパールに近づいている

表題の通りである。

家でインドカレーを作るようになってしばらく経ったが、いつまでたっても俺のインドカレーは"俺のインドカレー"であり、インドカレー屋のそれではなかった。

そんなことは当たり前だ。奴らはプロ、カレーで飯を食っている（ナンでも食うだろうが、そういう意味ではない）連中である。

そうやすやすとご家庭でプロの味を再現されてしまったら、インドカレー屋の価値などめちゃくちゃでかいナンがおかわり自由だとか、ラッシーだとか、あのどこの店でも同じ味のするサラダのドレッシングだとか、とにかく集団で踊る現地の有名歌手のMVだとか、飾ってあるシヴァ神とかガネーシャだとか、そんなものだけになってしまう。いや結構魅力多いな。

もちろんそれなりに試行錯誤はしてきた。事前に１日くらい肉をヨーグルト諸々に漬け込んでみたり、ホールトマト缶をぶち込んでみたり、カレー粉を２種ブレンドしてみたり、工夫で俺のカレーはよりうまくなったが、それでも店で食うカレーとは違うものだった。

きっかけは些細なことだった。買い物の際、たまたまスパイス棚の"ハウス食品 カレーパートナー マンゴーチャツネペースト"が目についた。使い切りのミニパックで１００円前後だったと思う。

マンゴーチャツネ──それがどういうものか具体的に知っていたわけではないが、存在は知っていた。カレーに入れるとうまくなるらしい、そんな事をインターネットのどこかで眼にした覚えがあった。

それでも今の今まで実際に使ってこなかった理由、俺は料理にフルーツを使うということに抵抗があったのだ。

俺の中では果物とはデザートである。酢豚にパイナップル、ポテトサラダにリンゴ。それらは人類の大いなる罪であり、罰であるとさえ思っていた（勿論それを好む人が居ることも理解しているが）。

とはいえこれはそれらとはまた趣が異なるのもまた事実。純然たる料理の具材ではないく、あくまでカレーを引き締めるための味付けのひとつにすぎない。

そんな事を考えたのもあってか、ほんの気まぐれでマンゴーチャツネを買い、そしてそれを使ってバターチキンカレーを作ったのだ。

そうして出来あがったカレーは、当たり前だが見た目が特別変わるとか、そういうものではない。しかしながら、味見の段階から、”これまでとは違う…!!”という実感があった。

俺の中でインドカレー（というかここではバターチキンカレーとする）を構成する主要な要素を抜き出すと以下の通りである。

各種スパイス、チキン、野菜薬味（トマト、タマネギ、ニンニク、ショウガ）、ヨーグルト、白ワイン、バター、オリーブオイル……その他ウスターソースなんかの雑多な隠し味を除けばこんなものだろうか。

辛味はスパイスが、酸味はトマトやヨーグルトが、甘みはタマネギがそれぞれ担っていると思っていたが、これにはどうやら"甘み"が足りていなかったようだ。

それにマンゴーチャツネというだけあってメインで使われているのはマンゴー、俺が日常的に食おう等は全く考えもしない果物である。新鮮な味わいが加わるのも当然だ。

最近は久しく店のカレーを食えていなかったが、出来上がったカレーをいざ食べてみると、脳裏にナンのおかわりを勧めるタイミングを見計らっている店員の微笑みが見えた気がした。

なるほど、これが俺のカレーに足りていなかった大きなパーツだったのか。感慨深い。

もちろん、これでプロのカレーが再現出来たなどと思っている訳ではないし、こんな調子でいずれ再現できるとも思っていない。

だが、これによって俺のカレーはインド、いやネパールに大きく近づいたということは確かなのだ。

別にしっかりプロのレシピを調べたわけでも、店員に教えてもらったわけでもない。インターネットの適当なレシピをベースに今まで回数を重ねてきた、単にそれだけのものである。

そんなものであっても完成度が高まることは至上の喜びである。単に新しく材料を加えたというだけで、先人の創意工夫の一端を垣間見ることが出来たのだ。こんなに嬉しいことはない。

これからも俺はインドカレーにマンゴーチャツネを入れるだろう。今度は更に何か新しいものを入れてみるかもしれない。

そんな、工夫とか努力とさえ言えない"気まぐれ"によって、俺のカレーは形を変え、到着こそしなくとも、また少しづつネパールとの距離を縮めていくだろう。

もし、あなたが今までにマンゴーチャツネをインドカレーに入れたことがないのであれば、次回は是非マンゴーチャツネを入れてみてほしい。

プロの味を保証するものでは決して無いが、それはきっと今までのカレーとは文字通り"一味"違うものになっているだろうから。

あとあのカレー入れる取っ手付きの金属容器も買うといい。雰囲気が出るから。

Permalink | 記事への反応(3) | 00:36

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