夫はかつて女性向けジャンルにハマっていた。
それはもう今までに無いくらいの勢いでハマった。完全に沼。毎日毎日何度も原作を見ては、あの話のあそこがいい、あのキャラのここがいい、とにかく全部いい!僕は男だからこの作品のターゲットではないけれど、この作品に会えてとても幸せだといつも語っていた。
夫はそんな作品への愛が高まりすぎて同人活動をしたいと言い出した。元々絵を描くのでTwitterでアカウントを作り、同じジャンルの人をフォローし、「みんな女の人なのかな〜男って言ってる人いないね〜」などと言いながら絵をUPしたり作品への愛を呟いたりしていた。夫は絵が上手かったので、ジャンル内でそれなりに人気があった。
ある日、近所のイベントでオンリーが開かれることが分かり、夫は「出たい!本も欲しい!」と言い出して、イベントまで一ヶ月もなかったのに熱量だけで本を作り、ウキウキしながら出かけていった。
ところが、いざイベントが始まるとお目当ての本を買いに行った夫が1時間もせず帰ってきた。販売拒否されて買えないと言うのだ。
『男の人には売りません』『男のクセにキモ』『転売屋来んなよ』などと言われて売ってもらえなかったらしい。仕方がないので私が買いに行くと普通に売ってもらえた。
全部買って戻ると、今度は夫のスペースに買いに来た人が売り子の私に『ファンです!絵上手いしいつも見てます!応援してます!』などと言う。
まあ分からんでもない。私もスペースに男の人がいたら売り子かな?と思う。なので『ありがとうございます!こちらが本人です!』と夫を示すと『えっ…』とあからさまに嫌そうな顔をされた。『描いたの男の人なんですか?じゃあいらないです』という人もいた。
夫側に何か落ち度でもあったのかと思ったが、夫は見た目も態度も普通、イベントもよく行くのでマナー違反があったということはない。ただ女性向けジャンルにいた男性だからここまで酷い扱いを受けた。
原作が多様性を扱っていたので、ジャンル内にもいわゆるポリコレっぽい空気があった。でも実際には『女性向けジャンルが好きな男性』というマイノリティに暴言を吐くような人たちだった。
この件で夫はかなり凹んでしまった。イベント後も『男のクセに』DMが相次いで来てしまい、結局アカウントを削除してしまった。
そんな夫の仕事はいわゆる『中の人』なので、世の中に夫が関わった物がたくさんある。
当時販売拒否した人たちが、夫が関わった物を神の創造物の如く持ち上げたり、必死で手に入れようとして戦争しているのを見るとほんとーーーに愚かだなと思っている。
再投稿は甘え
友達が腐男子で、代理売り子したことある 割とこういう話あるんだなあと思った