2016-06-02

キャバ嬢が教えてくれたこと

20代の半ば、仕事場で完全に爪弾きにされていたので、定時で仕事を終えてキャバクラやガールズバーに入り浸るようになった。

当時の自分はコミュ障だったし、いわゆる分かりやすい女性恐怖症だったと思う。

今思えば、ああいう場所で働く女性達には随分と色んなことを教えてもらった。

あの時期、自分は女性と話すレベルを格段に上げられたと思う。

とはいえ、1時間5000円とか取るもんだから、相当な勉強料だ。

個人的な感情が入ると首が回らなくなる可能性があるので、あくまで講師だと言い聞かせていた。

しかしそんな中で、一方的に本気になってしまった女性がいる。

彼女は普通のバーとキャバクラを掛け持ちして働いている大学生だった。

背は高く、スタイルもいい程々に遊んでそうなギャル系の美人だった。

性格は結構暗いとこもあり、とても気が合った。

友人同士の間では、女性扱いされないキャラだったそうだ。

そんな彼女を女性扱いして「かわいいよ」と言っていたら、毎日LINEをくれるようになった。

「営業目的じゃないから気にしないで」

「今は就活忙しいけどいつか飲みにいこうね」

という内容をずっと鵜呑みにして、完全に俺のことを好きになったと勘違いした。

やがて、俺の方が彼女に依存し始め、カードの限度額が許す限りお店に通うようになっていた。

ようやく彼女の就活が終わり新卒として働き始めた頃、飲みに行くどころかLINEの彼女からの返事すら遅くなっていた。

それでも、「いきなり夜はちょっと勇気いるからランチ行こう」という約束は果たせた。

しかし、問題はこの時に起こった。

前々から話していたつもりでいたが、30歳目前の俺はアルバイト勤務だったことを彼女は知らず、この時に話して知ったのだ。

実家暮らしというのは知っていたので、彼女の目には

「30手前で実家暮らしのフリーター」という不名誉な男が映ったのだろう。あからさまに表情が曇った。

人目を気にするなんて情けない、とは思うけど、実際に情けない自分を自覚するしかないことが妙に切なかった。

それから彼女との連絡は途絶えた。

「遅くなってごめんね、最近忙しくて」という連絡も、徐々に来なくなり、

LINEは「元気にしてる?」「大丈夫?」という俺からの問いかけばかりになり、やがてそれさえも無くなった。

あれから俺は必死で働き続け、正社員になった。

一人暮らしも始め、下手なりに自炊や洗濯などの家事も一通りこなしている。

普通の人間に近付く、というのはネガティブに語られそうだけど、自分にとって前進だったと素直に思う。

今彼女にもう一度会えたなら、俺はなんて言うだろう。

彼女にアドバイスされたわけではないけど、普通の人間に近付くきっかけをくれて、教えてくれたのは彼女だ。

となればやはり、お礼を言うべきなのかもしれない。

今日は彼女がカラオケで歌って欲しいとせがんできた、あの歌でも聞いて感傷に浸るとしよう。

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