2010-07-27

あなたが目をそらしている事

人間の心には、混乱や脅威をもたらす刺激から、自分を守ろうとする働きがある。こうした心の防御機構があるために、私たちは、一見、混沌とした印象をあたえるこの宇宙の中で、秩序感を保ちながら生きることが出来る。人間の脳は、毎瞬毎瞬、諸々の刺激に曝されている。膨大な刺激が生み出す情報を処理するとき、脳はまず日常生活の中で馴染みのあるものから処理していく。

しかし、日頃は接することのない新しい刺激に曝されたとき、脳はどう対処するのだろうか? 脳はそれ自身にとって馴染みのある現実の枠組みに沿って情報を処理する。そのために、脳にとって「異質」と見なされる情報は、後々の処理と分析のために、まずは潜在意識に入れられる。しかし、こうして潜在意識に入れられた情報の大半は、そこに保管されたまま決して顕在意識には送られない。顕在意識日常的な現実への対応に追われて忙しいために、潜在意識にある情報に注意を振り向ける余裕が無いからである

人類はこうした現実認識の仕方を、過去何千年にわたって続けてきた。実はそれによって、私たちは数多くの新しい体験に気づく機会を取り逃してきたのである

異質な情報に出会うと、人間の脳はその情報をすぐに潜在意識にしまい込む。自我はそうした体験が起きたことを受け入れようとしないのだ。もし人類のこうした情報処理の仕方が、今後も変わらずに続いたとしたら、私たちはごく限られた現実の領域の中で起きる出来事だけしか自覚できずに生き続けることになるだろう。

脳は、それ自体に混乱を与えるデータを隠す術に長けてるとも言える。異質な刺激を防ぐための脳の防御機構とは何か?

それは感情である

異質な刺激や情報に接したとき、私たちは理由のない不安に駆られるなどの、無意識レベルの抵抗を味わう。不快感を伴なう感情的な反応は、「心の奥深くにあるものを探りたい」という私たちの探究心を阻む赤信号のような働きをする。もしこうした妨害さえ無ければ、私たちは心の深部の探求を通して、数多くの驚くべき発見をするだろう。

私たちの心には、自我レベルでは自覚できない無意識の抵抗が数多く潜んでいる。それらは、私たちが大いなる現実に心を解き放つことを妨げる「心のなかの壁」である

関連:

茂木健一郎 クオリア日記

モンスターの正体:

http://kenmogi.cocolog-nifty.com/qualia/2010/07/post-5989.html

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