夜、歩いていると無灯火の自転車が前方からやってきたので、
慌てて避けようとしたが、ハンドルがぶれたのか、俺の足に車輪が接触した。
速度はそんなに出てなかったからあまり痛くはなかったが、なんてふざけた奴だと思い、
「危ねぇだろうが馬鹿!」と怒鳴ってしまった。
相手の女は「はぁ?」と怒鳴られたのが気に食わないという顔でこちらを睨みつけてきた。
苛立って思わず右腕を掴んで身体を引き寄せて「ふざけるなよ」と恫喝めいた真似をすると、
相手はいきなり「誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」と大声をあげた。
びっくりして相手の腕を放したが、それでも女は叫び続けていて、
どうすればいいか分からなくなった俺は倒れている自転車のカゴのあたりを蹴飛ばして、
「バカ女! ふざけんな!」とまた怒鳴ってから走ってその場を離れた。
後ろから女の耳障りな金切り声がきゃんきゃん響いてくるのが本当に腹立たしくて、
よっぽど引き返してその馬鹿っ面を殴り飛ばしてやりたかったが、警察に捕まるのは嫌なのでそのまま家に帰った。
あの馬鹿女。「助けてぇ!」だと? まるで自分が被害者のような態度が凄く気に入らない。
車輪がぶつかった足は赤く腫れて痛むし、気分は最悪だ。