家に居れば行き詰った家族、学校に行けば思春期オーラで悶々とした教室。
バイト先は明らかな人員不足で、常に忙殺される割に時給が低いブラック飲食。
かような境遇の中で、俺はというと慢性的に悪化する中二病患者。どうしようもない。
学校が終わる。一刻も早くいなくなろうとして、廊下を進んでいる最中、
突如として、上記の肥溜め的な環境で暮らしているという実感が脳から臓器群を汚染し通過し足の先まで充満した。
荒廃し、暗い狂気が渦巻く監獄のような雰囲気が全身を支配し、外部に漏れ出しているような実感があった。
数メートル先に階段がある。異常に不快な精神状態が作用したのか、死に直面している気分になっていて、それが更に気分を害した。
そのとき、前方1メートルほどに、向かいから笑いながらふらついて来た女子が居た。あまりに能天気に見えて、思わず軽蔑してしまった。
それゆえこの怨念をぶつける事に躊躇は無かった。目が合った。無言で睨む。自然に浮かんだ方法だった。恐怖に陥れるにはこれで十分過ぎる、と確信していた。
楽しげな雰囲気だった女子は、一瞬で動きを止め、表情が固まった。俺は睨み続ける。女子の足が下がる。どうにも間がある。
次の瞬間、名前も知らない女子は悲鳴を上げ、よろめきながら歩いてきた廊下を逆戻りし、教室に逃げ込んだ。「今、マジで怖かったんだけどー」切迫した声が響いた。