彼女がいた。
自分から好きになってつきあい始めた。
「聞いたらぜったい(つきあうのが)イヤになるよ」という前置きから、話をちょっとずつ聞いた。
そのときにつきあっていた彼氏と2人でいるところを襲われた。
輪姦された。
それを聞いたとき、どう受けとめていいか、なんて声をかければいいか分からなかった。
話の衝撃に僕自身も打ちのめされていた。
眠れなくなった。人を信じられなくなった。今まで信じていたものが絵空事に思えて、憧れていたものが、どうでもよくなった。
仕事も行く気はしなかった。いろんなことがほんと、どうでもよくなった。
社内恋愛だったので、彼女に心配かけてはいけないと思って出勤した。
しばらくして遅番の彼女が出勤してきた。笑顔で同僚に挨拶していた。
何日ものあいだほとんど眠れていないし、ろくに食事も摂れていないはずで、
どんな暗澹たる感情に襲われているかを思って、その顔を見た。
強さ・集中力・それを支える根源的な生命力。
どれも僕には無かった。
仕事をしていても、彼女の打ち明け話が頭をよぎる。とたんに仕事の手が止まる。
一度そちらに頭脳を持って行かれると、自力では帰って来られない。
調べたところによると、
フラッシュバックというのは、通常の心理では受け入れがたいほどのショックを受けたときに
なんとか受け入れて適応しようとする脳みその働きなんだそうだ。まぁ一説だろうけど。
まして、理不尽な出来事によって、これまで築いてきたものを突如壊された経験を持つ者が
正確に迅速にコツコツと業務をこなしていくのは、意志の力によらなければ、いったい何を信じてのことだろう。
自分なら、なにもかも投げだしてしまったと思う。
もし彼女の会社が別なら、勤務中に彼女の姿を見ることがなければ、あのつらい時期を乗りきる(やりすごす)ことは出来なかった。
彼女が受けた出来事に、僕も打ちのめされ
彼女自身によって、僕は支えられた。
その後、PTSDについて調べてみた。
レイプ被害のあと、命を絶ってしまう(事故も含めて)例もあるらしい。
それは、分かる気がする。
「生きていて良かった」が彼女の口癖だった。
その「生きている」ことが、どれだけ大変なことか。
その一端を知った僕としては、レイプ被害の生存者が
ただ生きていると。生き抜いているという、そのことだけでその人を尊敬する。
レイプを題材にしたエロ画像や動画があるけど、ほんとにうんざりする。
「死ねばいいのに」って思う。
レイプをして喜んだ奴らが、その犯した罪に苛まれながら人生を過ごさせるには、どうすればいいんだ?
「レイプのどこが気持ちいいのか分からん」っていう奴を増やすには、どうすればいいんだ?