どこか病的な、不健康な髪の抜け方をして薄くなっていく頭を見ると言葉にならないほどこわい。つらい。どうして、なぜこの私から奪おうとするの。今までだってさんざん苦しかったのに、まだ奪い足りないの?神様。運命。これ以上醜くなりたくないよ。弱った異形の風貌になりたくないよ。
でもここで、そう思って気付くことがある。
私は今まで自分では意識していなかったが自分の容姿(首あたりから上)にまんざらではない思いを無意識下で抱きそれを恃みにしていたこと。いわばナルシシズム。
その容姿の上にあぐらをかいていたこと。
容姿などたいした問題じゃないとでも言うような風でありながら、実はそこそこ重要視していたこと。むしろここ5年くらいでそういう人間に変化してしまったこと。
愛されなくなると思っていること。
実は、持つ者と持たざる者と二分するなら、髪や顔については物理的な意味と精神的な意味(自信、自己肯定など)の両方で持つ者であったこと。
こういった自分の精神的な狭さ、至らなさに気付いて、自分が嫌になる。弱って体が醜くなっていく。それだけでなく精神まで醜かったんだ。違うか。そうじゃなくて、そもそも弱っていくからだを醜いと思ってしまうような精神だったんだ。上手く言えないけど。
でも、そこでもう一つ気がつくのは、弱っている今だって、無意識的で自分では気がついていないたくさんのものを持っているし、それにまんざらでもない気持ちを気がつかないうちに持っているし、色々恵まれているんじゃないかっていうこと。もっといえば、この先いくら失っても奪われても、まだ無限にたくさんのものを私は持っているんじゃないかってこと。そう考えることができるのなら、この経験は私のターニングポイントになりうる。
ああでもね、やっぱりね、失いたくないんだ。どう考えたって、失うことは怖くて寂しくて悲しくて怒りに充ちてやり場のない気持ちと絶望をもたらすから。