2008-05-27

ある闘い

※食事中の方はご注意ください。

数日前から風邪なのか発熱した。いい加減ヤバいと思って医者に行き、それなりの薬をもらった。翌日はすこぶる快調。このままきちんと薬を飲み、摂生すれば、健康体に戻れるとあたしは信じた。

しかし、発熱の罠というヤツがあたしを待っていた。

発熱というのは、発汗を伴う。薬を服用した当夜は、下着を一晩で10枚以上替えたりもした。もちろん、それなりに水分は補給したつもりだ。しかし、それはほとんどが汗になって出て行ってしまったらしい。

それでもって、食欲はそこそこあった。食事は普段通りに食べられた。

そうなると……翌日のとある個室内では、孤独な闘いが待っているというわけだ。

人間、食べるモノを食べれば、出るモノは出るから。そして、ソレは、水分があれば柔らかくなってくれるが、もしも突発的な事態で大した水分が残されていなかったとすると……固いモノと狭い出口のせめぎ合いで、大変なことになる。

「ふんぬ〜〜〜〜」「うぉう!」「ぎゃぼ〜」

気合いだー!……某女子レス選手のお父さんのかけ声が脳内をよぎる。そうだ、今こそ、人生経験上、最大の気合いが必要なのだ。がんばれあたし。

しかし、出口に対して、射出物が固すぎる。終わり無き激痛。腰を貫く怒号に耐え続ける。腹筋フルパワー!

「ぐああああ」

だめだ、このままでは……額から汗がぽたり。こんなところに垂れてないで、あの物体の中で働いて欲しいと切に願った。

「地球のみんな、オラに便意を分けてくれ!」……だめだ、便意は臭いほどある。

……じゃあ「オラに便器を分けてくれ!」……便器は1台あれば充分すぎる。

他人から見ればアホな想像だが、多少でも気を紛らわさないと、失神してしまいそうだ。

と、クラリとめまいがしたそのとき、天からの救いが目に入った。

「切」「おしり」「ビデ」「乾燥」「脱臭」……うぉぉぉぉぉ! 「おしり」! 「おしり」! 「おしり」!!

この手が……残されていた、か!

いわゆる温水洗浄便座である。用を足した後の少々汚れた穴を、お湯できれいに洗ってくれる、気持ちの良い装置だ。

しかし、こいつには説明書に無い利用法があるじゃないか。やったことはないが、今こそそのときだ!

あたしは迷わず、「おしり」のスイッチを押した。

「ピッ」

ぶわぁぁぁぁ……。生暖かい水流が、あの穴を直撃する!

「ぐわはっ……」耐えるんだ耐えれば耐えよう!

永遠と思える数秒が過ぎた。あたしは「切」を押した。

「ピッ」

「はぁ、はぁ、はぁ……」

予想以上の衝撃で足が震えた。しかし、多分こうするしかないだろう。つまり、水分不足で射出物が固くなっているならば、今から水分を補給させてしまえばいいのである。もう、どんな恥ずかしい痛みが襲ってこようとも、この場で死ぬよりは遥かにましだ!

「ピッ」「ごあぁ!」「ピッ」「はぁぁぁ……」「ピッ」「ぐぎぃぃぃ!」「ピッ」「ほぅぅぅ……」「ピッ」「べぶぅぅぅ!」「ピッ」「ほぬぅぅぅぅ……」……

何度か繰り返すうちに、体内のソレの様子が変わってきた。だんだん前へ、もとい、下へ向かうようになってきた気がする。今こそ、必殺技をキメるときだ!

「か〜め〜は〜め〜〜〜〜〜波っ!」

本当にそう叫んで、腹筋にぐぐっと力を入れた。どぉぉぉぉぉ、とした刺激! 開放感! 昇天感!

「あqwせdrftgyふじこlp;@:!!!!!」

戦闘は……あたしの勝利で終わった。普段の数倍の香り。そして、圧迫感の割には大した量ではなかったソレ。

「はぁはぁ……はぁ」

一瞬だけ名残惜しさがよぎったが、振り切ってレバーを引いた。

バイバイ、あたしの宿敵さん。そして、あたし自身でもあったあなた。

きっとあなたのことは……明日には忘れているわね。

  • 温水洗浄便座にはそんな使い方もあったのか!! 水分をそういう方法で下から補給するなんて思いもつかなかったよ。 それにしてもすさまじい戦いだ……

    • http://www.alldigest.net/health/benpi_ji/000766.html 年中やってると癖になって、温水刺激がないと出せなくなるから気を付けよう、だそうだ。

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