2008-05-18

くもさん

私が彼と同棲を始めたのは五日ほど前であろうか。同棲、というよりは彼が勝手に上がり込んで暮らしている。どこから入り込んだのかは定かではない。はじめのうちは慣れないせいかうろうろと動き回る彼であったが、しばらくで落ち着き、彼のことを気にとめることはなくなっていった。

ある日帰宅すると彼の姿がふと目にとまって、これでいいのかと自問自答する間もなく、私は彼を外へ追い出そうとしていた。彼は特に抵抗する様子は無いが、まとわりつく羽虫を避けるように面倒がりながら逃げる。そんな様子を見て私も面倒になり、結局彼を追い出すのをやめた。

あくる朝、私は部屋の掃除をし、掃除機をかけた。掃除機は落ちた糸くずや埃、スナック菓子の食べかす、あとは髪の毛を少々、ぐいぐいと吸い込む。だいたい終わったかと思ったあたりで、私は彼に掃除機のノズルを向けていた。スイッチオン。彼は八本の四肢を踏ん張り、吸い込まれまいと抵抗する。八本なのに四肢とはまた妙な話である。閑話休題。しばらくノズルを向けていたが、吸い込めないと悟った私は、掃除機を強に設定する。こんどはかなり必死である。それでも吸い込めない。

仕方なく私は彼を吸い込むのを諦めた。これ以来彼は部屋の隅っこに逃げてしまった。そして今日天井に張り付いている。

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