私は恋をしただろうか?
私の人生には一度もいたことがないような、あの激しい人間に、恋をしただろうか。
恋心があるかっていうと、なんだか違うような気がする。
彼に対してあるのは、どちらかというと、恐怖。それから、かすかな期待。
そう、期待だ。この人は、私の何かを変えるかもしれないという期待。
自分の何かを変えてくれるかも、なんて、浅はかな気持ちだ。
ずっと、自分のことは自分でやって、自分の人生は自分で決めるんだって、思ってきたし、やってきた。
それだけが、たいした才能も能力もない私の、たった一つの持ち物だったし、誇りだったのに。
情けない。バカだ。
自分で決めたはずの人生の、孤独に耐えかねて誰かに助けを求めるなんて。
彼は私の人生を背負うつもりもないし、助けるつもりもないし、ただ負担の少なそうな女だと思っているだけだ。
私も彼も、恋じゃない。それでいい。