人生に一度しかない機会だからまあ行ってみるかと思って行ってみたものの、誰からも話し掛けられない。周りはみんな知った顔なのだ。でも誰も俺を見ようとしない。これはおかしい。おい、俺だよ、俺だよ、どうしたんだ、みんな。
中学生の頃の友達、少なくとも俺は友達だと思っていた奴を見つけたので話し掛けると、なんだかそっけない。俺が頑張って話題を振っても、一言二言相槌が帰ってくるだけで、話を続けてくれない。これ以上話をしようとしても相手にその気がないというのなら仕方ないので俺が離れると、そいつは他の奴と話していた。俺と話す時とは違い、とても楽しそうに話していた。
そう、俺なんてどうでもいいのだろう。どうでもよかったんだ。俺は悲しくなった。悲しい顔をした俺の周りは、みんな楽しい顔ばかりだった。どうしてそんな輝かしい笑顔をしていられるんだ。俺がこんなに寂しくしているのに。
成人式の後、クラスのみんなで飲み会があったという。特に誘いもされていなかった俺は行かなかった。さぞ楽しい飲み会だったんだろう。俺なんてどうでもいいのだ。
しょんぼりしながら一人で家へ帰ると、親が笑顔で待っていた。「お帰り、楽しかった?」楽しいわけがないだろう。でも俺は笑顔で言った。「楽しかったよ、昔の友達と会えたし」
俺なんてどうでもいいのだ。
よかったね、優しい親が健在で。