夜の冷たい風を突き抜けるようにエンジンをふかせば、
分厚い手袋の上から突き抜けてくる寒気に手はかじかんだ。
どこまで走っても見えないゴール。
僕はまっすぐな道を延々と走り続ける。
エンジン音と風を切る音だけが、目の前以外に感じとれる唯一の世界。
白いはずの吐息を白いと感じることなく、ただ風に流れるがままに漏らしていく。
時おり見える真っ白な街頭が方々に突き刺さり、僕が往くべき道を照らしている。
しかし道は暗く、かじかんだ手が一層アクセルを緩めさせる。
気がつけば自動販売機の前で僕は止まっていた。
おもむろに財布から硬貨を取り出しては、自動販売機に投入していく。
「まいどー」という、いかにも気の抜けそうな声。
僕は温かいココアを買い、かじかんだ手に温もりを取り戻すことにした。
手袋を外した手であつあつの缶をそっとつつみこむと
ふわっと両手にぬくもりが戻っていく。
プルタブを引き、少しずつ少しずつ、
あたたかいココアを口へ。