空気が急に重くなったように感じた。
彼の周りには薄灰色の雲のような煙が渦を巻き、徐々に迫りくるようで一定の距離を保ち続けていた。
煙草を一本取り出し、ゆっくりとマッチをすり火をつけた。
彼は自分に語りかける。
世界はこんなに狭い空間だったのか?
常に煙にさえぎられ先が見えず、抜けだそうと足を踏み出しても煙も同じように動き始める。
もうどれくらい人と会っていないだろう。
いや、正確には毎日会社に通っているのだからそんなことはないはずだ。
しかし、一人になってみると何年も煙だけに囲まれていたように思えてくる。
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