「彼はそんな事を言うほど良い仕事はしていない」。
「そんな事を言える立場・地位にはない」。
それを言う資格、権利をいうものをここぞと捏造し、続いて彼がそれに「そぐわない」人間であるための物語が作り上げられる。
そして現代生きている人の大概は自己モニター能力が発達しているから、周囲によって定義されたその空気に強く反発する事が難しい。(実際に、「明らかに良い仕事」をしてたり、「高い業界的地位」にある人は収入も高く、失うものも大きいため、自分のいる業界に不満を感じても口には出さない。)
もう一つは、「これは特例だから」と言う方法。
「我々のいる世界(業界)は、《良くも悪くも特殊な》ものだから、「それ」が在る事は仕方がない」という。
「改善すべき」ように見えるその部分こそが、我々、君や僕を生かしめているのだ、と諭す。
そして、特殊である、という事は、特殊なルール、特殊な理論が存在する、と、世間のモラル、常識から「それ」を切り離す。
そして、「所詮は世の中は…」「所詮人というのは…」と大上段に構えた言葉を交えつつ、彼の言うことを「過ぎた理想論」と位置づけ、汚れた現実の尊さを説く。