盛夏。都心だというのに蝉時雨が響く雑居ビルの一室はエアコンが故障して工事中だった。
そう私の居る会社である。
誰がどうしたのか知らないが室外機の配管が屋上で押しつぶされて冷媒が回らなくなっていたのだそうだ。いったいこんなトコロの屋上で配管を押しつぶすなんて何をしていたんだろうか。
倉庫から引っ張り出した扇風機を独占して女子社員の恨みを一身に浴びると熱風であっても多少は冷える思いがしないでもない。
いや、後ろ指ごときで寒くなる歳でもないのだ。暑くて仕事をする気がしない。益々ぼんやりする頭で帳票とにらめっこするのはやめにしてパソコンのブラウザーを開き、夏休みをすごすための映画とか本をamazonで物色しつつはてなの匿名ダイアリーで茶々をいれて無聊を慰めていた。
「主任、仕事してくださいよ。」
「お前ら扇風機が目当てだろ。まずは冷たいものでも持ってこい。お中元にカルピスがあったろ、俺ぶどうな。」
ひんしゅくなど中年オヤジの余裕で軽くスルーして引き続き匿名ダイアリーを眺める。
そうしているとあることに気が付いた。2、3日前のコメントで元エントリーを見ようとトラックバックリンクをクリックするとエントリーが無いのだ。
褒められたことではないが投稿した後削除することは別に珍しくは無い。気まずかったり詰まらないと思ったりいろいろあるのだろう。
しかし今回気が付いたスレッドにはある共通点があるように思えたのだ。
「これは同じ人じゃないかな…。でも削除するほどのネタだったか?」
「主任、はい、カルピス。」
「え?ほんとに入れてくれたの?」
「いや待って、待てって、イテテテ!」
そのままたいした追求もできず、そのときは私の記憶の片隅にある仮説が提示されるにとどまった。
http://anond.hatelabo.jp/20070809141934 はてなを退会するとやはり匿名ダイアリーのエントリーもすべて削除されてしまうのではないか そうでもなかった。 (おわり)