彼女は元気よくそう言った。ふーんとか返しながら湯気を立てるうどんを想像して僕は無性に腹が減りだす。
「うどんは好き?」僕が聞くと、
「うー、どんなんだろね」とか極めて細部にこだわって返答してくる。ほら、まだ気づけない。
彼女はうれしそうにそう言った。ほーんとか変な音で返答しながら夕焼けをバックにたそがれる和田アキ子を想像して僕は意外と感動してしまう。
「和田アキ子は好き?」僕がそう訊ねてからしまったと思っていると、
「夕焼けには映えるよね」とかやたらシンクロした返答をしてくる。なあ、心読めるのか。
「今日は、ぱりっとしたYシャツの日だよ、でも。ううん、なんでもない」
彼女は歯切れ悪くそう言った。んむむ?と少し訝しみながら僕は彼女を前にして彼女を想像する。
「もしかして誕生日だったっけ?」僕は自信が持てないままに、でも全力で頭を動かしてそう聞くと、
「・・ありがと」って言ってくれた。
明日が楽しみになる理由を挙げるとすれば、全ての日が誰かの何かの記念日だってことだろう。
いつも何気なく通り過ぎるこの毎日に、いつも意味をくれる。